こんにちは。
最近、いろいろな会社のインサイドセールスの方と会話する機会が多く、Brazeでの業務内容や利用しているテクノロジーについて質問を受けるため、会話している内容をまとめます。
*Brazeは「インサイドセールス」ではなくBDRという呼び方をしています。
▼こんな人にオススメ
・インサイドセールスでさらなる成長の環境を求めている、次はマネージャーや組織づくりを経験したい
・外資系企業で実践しているThe Modelやセールスステージの概念・定義を知りたい
・BtoBマーケティング&セールス組織において必要なテクノロジーや最適な組み合わせを知りたい
Braze組織の概要
Braze組織は、The Model*の概念を取り入れており、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど、レベニュープロセスに合わせて組織が別れています。
The Model
出典)営業効率を最大化する「The Model」(ザ・モデル)の概念と実践
これは、集客から商談・クローズ、カスタマーサクセスに至るまでの各段階で情報を可視化・数値化し、部門を越えた連携を軸に売上の増大を図っていく考え方です。
マーケティングチームが獲得した新規リードをマーケティングオートメーション(MA)で育成、BDRがフォローしながらクオリフィケーション*を行い、営業に送客する流れです。
クオリフィケーション
リードクオリフィケーションを行うことで確度の高い顧客を顕在化させ、優先順位を明らかにしてからセールス部門に引き継ぐことによって、営業活動の生産性を高めることができます。
参考)https://jp.marketo.com/content/leadnurturing.html
Braze社内のマーケティング&セールスステージの考え方
マーケティング&セールスプロセスの枠組みに従い、SFDC内の情報を都度アップデートすることでリード・商談状況を管理しています。
営業に引き渡された商談は、各セールスステージが明確に定義されており、商談を次のステージに進めるための遷移判定基準(Exit Criteria)に従い、進捗状況を管理していきます。
Braze BDRのKGIは、パイプライン(商談)の創出件数です。Salesforceのステージ管理上だと「Stage2 – Discovery」以降の商談がパイプラインの扱いになるため、Stage2以降に進む案件をBDR経由でどれだけ創出できるかが評価に繋がります。
Braze BDRの業務内容
Braze BDRの役割は大きく3つです。(2021年9月時点)
個人的にはBrazeのBDRはマーケティングと営業の間の子みたいな職種だと思っており、完全な分業ではなくマーケティングと営業を行ったり来たりしながらパイプライン*を健全な状態に保つことが大きな役割となります。
パイプライン
出典)Salesforceの用語解説
見込み顧客から、購入客までのプロセスにある見込み顧客、あるいは金額、商談数などを指します
マーケティングと営業の橋渡し
Brazeのソリューションを深く理解し、Brazeが解決できる課題や、その課題を持つ人はどの業界のどの部門の方か、という考え方で具体的なターゲットペルソナを決めていきます。そして、そのペルソナは本当に正しいか、そのペルソナを集客するにはどのようなマーケティングメッセージが必要か、ということを各チームと連携しながら固めています。
例えば、営業に商談を渡したあとに、営業から商談の感触に関してフィードバックをもらうことでペルソナの解像度を上げています。フィードバックの内容としては、「課題の認識にズレはなかったか」「課題解決の手段としてBrazeソリューションに共感してもらえたか」「決裁プロセスにおいて影響力のあるキーパーソンになりえるか、またその理由」というように具体的に項目を設定してフィードバックをもらっています。
お客様とのリアルなやり取りをもとに解像度を上げたペルソナを共通認識としてマーケティングチームに共有します。優先度が高いペルソナを集めるために「スマホ向けメディアアプリのグロース責任者を対象としたウェビナーをやろう」「業界トッププレイヤーと”エンゲージメント”をテーマとしたトークイベントを企画しよう」といった施策に繋げていきます。必要に応じてBDRがウェビナー登壇したり、マーケティングコンテンツを執筆することもあります。
バリューセリング
Brazeソリューションを営業するにあたり、ペルソナに合わせたピンポイントな提案により、「顧客に差別化されたビジネス価値を共感いただく」バリューセリング*が必要だと考えています。
バリューセリング
出典)Salesforce パートナー向けバリューセリング
お客様のビジネスに及ぼす影響に重点を置いた営業アプローチです。お客様に関連するかどうかわからない機能のリストを押し付けるのではなく、お客様固有のニーズと目標に基づいて真の価値を提供します。
これは、フィールドセールスだけの話でなくBDRでも同じことです。特に、BDRは限られた営業リソースやハウスリストのなかで、Brazeソリューションと親和性の高い顧客を発掘し、パイプラインに繋げることがメインミッションになりますので、画一的なアプローチではなく一人ひとりにパーソナライズすることが求められます。
具体的には、顧客の業界や部門に合わせたメールやトークのスクリプトを作成、各チャネルからアプローチすることで顧客とのWeb商談に繋げます。Web商談では、詳細な事例やデモ画面を共有しながら課題や懸念点のヒアリングと認識整理、ソリューションに対する期待値のすり合わせを行うことで、次回以降の商談における時間価値を最大化できる状況をつくります。
バリューセリングについては以下の記事にも詳しく書いてます。
パイプラインマネジメント
リードを”見込み”顧客のままにするのではなく、将来の売上になるパイプラインに転換していきます。
パイプラインの目標は明確に決まっており、目標達成に向けてWeeklyでパイプラインの創出状況を確認・報告したり、パイプラインに繋がるMQL(Marketing Qualified Lead)やStage1(SQL:Sales Qualified Lead)のコンバージョン率を確認しています。
インサイドセールスのパフォーマンスは「活動量×活動効率」に起因するため、パフォーマンス管理が比較的しやすい業務かと思います。そのため、パイプラインを最大化するにはメールやコールといった活動量、コネクト率や返信率などの活動効率の2つを最大化するために行動を見直します。
また、営業のリソースや抱えている商談状況に合わせて引き渡す商談確度や数を調整するなど調節弁のような役割もあります。
レベニュープロセスをサポートするマーケティング&セールスのテクノロジー
Braze社内には、顧客・商談管理を行うCRMからレベニュープロセスの管理・自動化を行うMA、インサイドセールス業務の効率化・最適化をサポートするSales Engageなどさまざまなツールが導入されています。
見慣れないツールもあるかと思いますので、参考までにグローバルからの利用ガイドの一部を記載します。
Gong
Gongを使用して、顧客や見込み客との通話を録音しています。これは、同僚から学んだり、上司からフィードバックを受けたり、商談内容の改善点を特定に役立ちます。
LinkedIn Sales Navi
LinkedIn Sales Naviをプロスペクティングツールとして使用し、ターゲットとなる顧客の主要なコンタクトと接続します。また、LinkedIn Teamlinkを利用することで、部門を超えたアプローチ戦略を構築する際に、最適なターゲットを見つけることができます。
ZoomInfo
会社、組織図、連絡先(メールアドレス、電話番号etc)を調べるためにZoomInfoを使用しています。これは、POV(Point of View)やアウトバウンド戦略を構築する上で貴重なものです。
Datafox
Datafoxで資金調達や現在のテックスタックなどの企業情報を調査しています。これは、アウトバウンドや初期接触のためのPOVを構築するのに役立ちます。
Apptopia
Apptopiaを利用することで、アプリのダウンロードトレンドや顧客が提供するアプリのMAU/DAU、カテゴリランキングなどモバイルインサイトを調査できます。
Demandbase
DemandbaseはWebサイト上のコンテンツ閲覧や行動に基づいて、購買意欲を持っていると思われるアカウントを特定するために使用しています。ターゲットを特定し、アプローチの優先順位を決めるのに役立ちます。
Outreach.io
Outreachは、プロスペクトへのアプローチをシーケンスで運用するために使用しています。パイプラインを構築するためのプロスペクティングを規則正しく、組織的に行うために有効です。
6ヶ月間を振り返ってみたBDR立ち上げのやりがい
大手外資系企業から立ち上げ期の企業に転職して半年ほど経過したなかで、いまの環境で感じているやりがいは大きく3つです。
- ゼロからの仕組みづくり
- マーケティングや営業まで踏み込んだ業務領域
- ノウハウを学び即実践できる環境
ゼロからの仕組みづくり
いまの業務は仕組みを回すのではなく、つくるという感覚が近いです。Adobeのときは既存の仕組みのなかで「どうやるのか」をメインで考えていましたが、いまは成果を出すために「何をやるのか」から意思決定することが多いと感じます。
既にあるものではなく、新しいことをやることになるので、意思決定に必要な情報収集や整理、社内・社外で人を巻き込むための背景理解と伝達、具体的な自分の意思を伝えて実行のプロセスを進めていく、といった仕事の仕方です。
これまで取り組んできた内容(一部)
- BDR視点でのGo To Market Planの作成
- リードフォローの優先順位付けとリソースの使い方を明確化
- パイプライン状況の定点観測、ボトルネックの発見と改善点の考案・実行
- Salesforceの入力オペレーション設計、マーケティング&セールス数字を可視化するためのダッシュボード作成
- セールスステージのExit Criteriaの理解と日本法人に合わせて最適化
- 社内利用しているツールのユースケース整理とオンボーディング資料作成
- 顧客や営業のフィードバックから解像度の高いターゲットペルソナを定義
- Tier1層を集客するための課題整理、訴求メッセージの考案 etc
マーケティングや営業まで踏み込んだ業務領域
仕組みをつくる上でマーケティングや営業領域に踏み込む必要があります。営業と同等に製品理解やデモ実演、オブジェクション(異論、反対、質問など)のハンドリングをする必要がありますし、Tier1(最優先顧客)を集客するためのキャンペーンの企画・実施をマーケティングチームと連携して行います。
市場や顧客、製品の理解を深め、実行プランへの落とし込みや実行するには何が必要かなどを言語化して上司やチームに共有する機会が増えました。
ノウハウを学び即実践できる環境
日本法人は立ち上げ期なので、分からないことがあればグローバルのメンバーにヒアリングしたりアドバイスをもらうことが多いです。
セールスステージの定義や構築におけるアドバイス、各ツールのベストプラクティスや実践した施策の共有、マーケティング活動におけるオペレーション支援など、上流の戦術から下流の実行部分まで具体的なノウハウ共有と実践できる機会が豊富にあります。
また、JCC(Japan Cloud Consulting)ポートフォリオの企業と月に一度、アウトプットを前提とした勉強会があります。立ち上げ期にありがちな課題や悩みを共有しながら、すでにステージが先に進んでいる企業からアドバイスを貰うことができます。
営業からインサイドセールスに戻った理由
少しだけ自分の話もさせてください。私の場合は、新卒で日系のスタートアップ企業でBtoBマーケティングの組織立ち上げやテクノロジー基盤を構築、前職のAdobe(Marketo)はインサイドセールスとして入社、その後半年程で営業職(アカウントエクゼクティブ)にプロモーションして1年程営業を経験させてもらい、Brazeではインサイドセールスの職種で入社しています。
この話をすると「なんでまたインサイドセールスやっているの?」という質問をほぼ必ず受けます。その理由は、マーケティング&セールスの各部署を縦横無尽に横断しながら情報を得て、その情報をもとに自分で仮説立てや意思決定しながら仕事ができる部署がインサイドセールスだったからです。
これまでのBtoBマーケティング&セールスの経験を活かし、自分がカバーできる範囲を最大限広げたうえで、基盤や仕組みを作れる経験はいまのインサイドセールスがしかないと考えていましたし、入社して半年程経ちましたがその働き方のイメージは全く変わりません。
よくいただく質問
最後に
Marketo(Adobe)にいた頃に比べて一番変わったことは、自分が担当する領域が横と縦に広がり、意思決定が必要な範囲が増えたことです。
自分の数字だけでなくチームの数字を追う、自分の業務範囲だけやれば良いのではなく全社最適でいま何をすべきかを考えるなど、働き方や仕事への向き合い方は良い意味でこれまでと全く違うことが多いです。
新卒で入社した会社を含めて5年以上インサイドセールスの業務をやってますが、まだまだ学ぶことが多く、日々自身の経験がアップデートされていく感覚はいまのフェーズだからこそ実感できることだと思います。
(提供:著者「山梨 寛弥」のnote)