インサイドセールスは「SPIN営業術」をどのように活用するべきか

こんにちは!ウェルネス業界特化型SaaS hacomonoでインサイドセールスリーダーをしている樋口です。

インサイドセールスが好きで新卒からほとんどインサイドセールス1本でキャリアを歩んできました。

SaaS営業、はたまた法人営業関連のおすすめ書籍として様々な記事で紹介されているのが大型商談を制約に導く「SPIN」営業術

また、インサイドセールスにもおすすめの書籍としても多く紹介されており、法人営業に従事する人であれば1度は耳にしたことがある書籍ではないでしょうか。

しかし、、、

「SaaS企業で営業に携わるなら(インサイドセールスを含む)SPINの本を読むといいよ!と上司・先輩からおすすめされたけど、いまいち日々の営業活動で実践できていない」

「本の内容には納得だけど自社でどのように応用できるか分からない」

「示唆質問は意識しているけど、いざ実践するとなるとどのように質問すればいいか分からない」

このようにSPINを学び、意識はしているけど、実務に活用できていないと悩んでいる人は少なくないと思います。私もその1人でした。

しかし、SPINや他の書籍の内容を意識して日々のインサイドセールス業務を実践したり、社内外のセールス関係の方と対話をする中で少しずつ自分の中で形になってきました。

ということで、今回の記事では改めて大型商談を制約に導く「SPIN」営業術を読み直し、インサイドセールスとしてSPIN営業術を活用すべきかについてまとめていきます。

この記事の著者

樋口堅太郎/hacomono IS

経歴:ウェルネス業界特化型SaaS hacomonoでインサイドセールスをしています。インサイドセールスの現場で学んだリアルを発信 。 Twitterもフォローしていただけると喜びます!

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目次

SPIN営業術とは

SPIN営業術とは著者であるニール・ラッカム氏が12年間・世界3500件の商談を調査・分析し考案した、大型商談を成功させるための営業術で、潜在ニーズを引き出し、顕在化させるための4つの質問の頭文字を取ったものです。

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ここでいう大型商談がSaaS営業のような法人営業と考えることができ、法人営業に従事する人であれば、必ず身につけたいスキルの1つです。

もう少し具体的に解説します。

状況質問をして顧客の現状など背景を聞き、問題質問で顧客が抱える問題点や支障、不満を聞き、その問題に対し示唆質問を行うことで潜在ニーズを差し迫ったものにし、潜在ニーズ解決に向かって行動することの重大さに合意が得られたら解決質問を行い、その問題を解決することのメリットを顧客に話してもらう。

これがSPIN営業術です。

大型商談と小型商談の違い

では、なぜSPIN営業術が大型商談において必要なんでしょうか?

それは大型商談と小型商談の違いに答えがあります。

結論、小型商談において有効な潜在ニーズが大型商談ではあまり有効ではなく、潜在ニーズを顕在化させることが重要だからです。

潜在ニーズと顕在ニーズの違いについては下の画像をご覧ください。

潜在ニーズが「〇〇に困っている・不満に思っている」と行動にまで移っていないのに対し、顕在ニーズは「〇〇したい」と解決するために自覚し行動している状態です。

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大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 P75より引用

では、なぜ大型商談において潜在ニーズよりも顕在ニーズが重要なのか、本書に記載されている価値の方程式に答えがありました。

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大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 P80より引用

人や企業は問題の重要さが解決策にかかるコストよりも大きければ商品を購入します。逆に、問題が小さくコストが高い場合は購入する可能性は低いでしょう。

もし、既存のシステムからのリプレイスを提案するあなたの会社のサービスが高額であれば、値段に比例してニーズも大きくある必要があります。

このように、解決策のコストが低い小型商談では問題点=潜在ニーズを発見するだけで購入に繋がることが多いですが、大型商談においては解決策のコストが高いだけでなく、スイッチコスト(移行期間や担当アサインによる人件費)も必要なため、解決にかかるコストが高くなります。

ですので、大型商談においてはその商品を購入することを正当化できるようにニーズを深刻に重大なものに育て上げる必要が営業担当にはあるということです。

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大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 P113より引用

そこで、顧客が抱える潜在ニーズをより重大に、深刻にしていくために示唆質問や解決質問が効果的で必要となってくるため、SPIN営業術が大型商談において必要だと本書では記載されています。

ここまでSPIN営業術の概要について解説してきました。

では、いよいよ本題です。

インサイドセールスはどのようにSPIN営業術を活用すべきか

インサイドセールスはSDR(インバウンド)とBDR(アウトバウンド)に大きく分けることができますが、SPIN営業術の活用方法は大枠同じだと考えます。

※今回はアプローチ顧客の規模などは考えず、SDR=インバウンド、BDR=アウトバウンドの定義で記載しております。

SDR(インバウンド)におけるSPIN営業術

問い合わせや資料請求など、ある程度顧客のニーズが顕在化しているSDRで最初に重要なことは資料請求などのアクションを起こした理由を把握することです(状況質問)。

この理由が顧客の状況となります。

次に〇〇をしたいと顧客が考えている背景には何かしらの問題があるはずなので、「そもそもなぜ、このタイミングで〇〇を検討しているのでしょうか?」と顧客が抱える問題を引き出します(問題質問)。

SDRの対応時に注意しておきたいことが、顧客が「〇〇したい」と考えているが、問題を把握していないこともあるということです。

その際はこちらから「他のお客様であれば〇〇でお困りだったりするのですが、いかがでしょうか?」とこちらから問題を示唆してあげましょう。

こうして既に感じている顧客の問題を引き出しながら、深堀る質問も行った上で、「もしかしたら、〇〇なことも起こったりしていませんか?」という示唆質問を行うことで、顧客がまだ気づいていなかった潜在ニーズを引き出します。

そして最後に「〇〇という問題を解決できればメリットはありそうですか?」「〇〇という問題はいつまでに解決していきたいですか?(しれっと導入までの期限をヒアリングする)」などの解決質問を用いて問題を解決方法について顧客に話してもらいます。

以上が私の考えるSDRにおけるSPIN営業術の活用方法ですが、より具体的なイメージをするために、hacomono社でのSDR時のトークを用いて解説していきます(※hacomono社はフィットネスジムや運動スクール業界向けのオールイン型店舗運営SaaSを提供しています)

hacomono|ウェルネス領域の店舗を...
hacomono|ウェルネス領域の店舗を変える会員管理・予約・決済システム。 hacomonoは、フィットネスクラブ・インドアゴルフ・24hジム・スイミングスクールなどの店舗運営に必要な機能を網羅した会員管理(CRM)・予約・決済システムです。業務の効...

(担当者着電→オープニングトーク終了)

IS:今回資料請求をいただいたごきっかけはどういったところになりますか?(状況質問)
顧客:予約システムの導入を調べていたら御社を見つけました。

IS:ありがとうございます。ちなみに今は予約システムはどちらを使用しているのでしょうか?(状況質問)←他にも決済方法や顧客管理方法などの状況をヒアリング
顧客:今はLINEと電話で対応しています。

IS:LINEでの対応だとお客様とのセッションもあって予約の対応が大変と相談いただくことが多いですが、予約の作業ではどういったところでお困りですか?(問題質問)
顧客:そうですね。会員数が増えてきてLINEの返信が深夜とかになることが増えました。

IS:他社さんだと初回体験予約の問い合わせをもらったけど、返信が遅くなり、その後連絡が返ってこないなど新規顧客の取りこぼしがあると聞きますが、そういったことはありますか?(示唆質問)
顧客:そうですね。

IS:他に店舗運営においてお困りのことってありますか?(問題質問)
顧客:プランによって予約数が変わるのですが、今だと都度カルテを見る必要があるので、カルテが手元にないときなどはすぐに対応できないことがあります。

IS:そうなんですね。今後も会員数が増えてきたら対応がより大変にな理想ですか?(示唆質問)
顧客:そうですね。

IS:それでは、今お話いただいたLINE対応の工数が負荷になっていることと新規顧客の取りこぼしについて、解決できたら御社にとってメリットはありそうですか?(解決質問)
顧客:そうですね。解決していきたいです。

こうして顧客について十分にヒアリングすることができたら、顧客が抱える問題をどのように解決できるかサクッと商品紹介を行い、商談の日程調整を行います。

BDR(アウトバウンド)におけるSPIN営業術

顧客が何かしらの問題を抱えていることを想定できるSDRに対し、BDRはそもそも顧客が問題を抱えているかすらも分からない状態でHPや採用サイト、プレスリリース、取材記事など様々な情報から抱えている問題を想定してアプローチを行います。

ですので、BDRにおいても示唆質問や解決質問は極めて重要ですが、顧客の問題を発見できなければ、示唆質問や解決質問の出番は来ないため、まずは顧客の問題を発見するための問題質問が重要になって重要だと考えます。

問題質問の聞き方で有効なのが「〇〇とご相談いただくことが多いのですが〜」のような第三者トークです(テンプレで使い回しでOKです)。

第三者トークとは自分と顧客以外の第三者の例を出すことで間接的に自分の主張を伝えるテクニックで、顧客も第三者の話ということでこちらの主張も受け入れてもらいやすくなります。

第三者トークを使用する理由としては上述の通り、顧客が自分の主張を受け入れてもらいやすくなるからという理由もありますが、裏返すといきなり電話をかけてきた相手から「〇〇に困ってないですか?」といきなり質問されたとしても「特に困ってないです(なんで見ず知らずのお前に教えなあかんねん!)」と無下に返されてしまうことが多く、それを避けるためです。

BDRで顧客から問題を引き出すために重要なことは他にもたくさんありますが、今回は割愛します。

こうして、何かしらの問題を引き出すことができてようやく示唆質問や解決質問の出番です。

私の経験上、特にBDRでは顧客の問題を見つけただけで商談化することは難しいと考えます。

理由は顧客は何かしらの問題はあるかもしれないが、特に困っていないから現段階では行動をしていないからです。

本書には顧客が支払うコスト以上に問題が重要であれば商談は成立すると記載があります。

それと同じようにインサイドセールスの段階でも顧客が支払うコスト(=商談に必要な30分〜60分の時間)以上に顧客が抱える問題が重要でなければ商談のお時間をいただくことはできません。

ですので、発見した問題に対して示唆質問を行い問題の重要性を高め、解決質問を行い、その問題を解決するメリットを顧客に話してもらう必要があるのです。

また、ここで新たに引き出した潜在ニーズは商談時の貴重な材料になるため営業からも喜ばれることは間違いないでしょう。

まとめると、BDRにおいてのSPIN営業術活用方法は「商談のとっかかりを作るための問題質問が最も大切で、商談の機会を確実に得るために発見した問題に対して示唆質問や解決質問を活用する」だと考えました。

hacomono社でのBDRのトークを用いて具体的に解説していきます。

(担当者着電→オープニングトーク終了)
※4店舗目の出店情報をSNSで拝見し架電した設定

IS:4店舗目を来月に出店するということですが、現在は体験予約や会員さんの予約はHPに記載のある通りLINEや電話で行っているということでお間違い無いですか?(状況質問)
顧客:はい

IS:多店舗展開を行う企業様から「店舗が増えて会員数も増えてきて、スタッフの対応が追いつかなかったり、スタッフの属人的な管理に問題意識を持っている」とご相談をいただくことが増えているのですが、御社であればしっかり対策していると思いますが、お考えになられたりしますか?(問題質問)
顧客:そうですね、この規模になると自分での管理も少し難しくなってきたと思ってはいます。

IS:何か解決に向けた取り組みとかってすでに行われていますか?(状況質問)
顧客:いいえ、まだできていません。

IS:御社はSNSの運用も力を入れていてフォロワーも多いですし、Facebook広告も出稿していると思うので、問い合わせも多いと思うのですが、問い合わせをもらったけど、スタッフの対応が遅れてしまい離脱とかってあったりしませんか?(示唆質問)
顧客:確かに増えてきたなと思います。

IS:そうですか。店舗数の増加に伴い広告費も増えてくると思うのですが、離脱がある状態だとCAC(顧客獲得コスト)の高騰にも繋がったりしませんか? (示唆質問)
顧客:そうですね。それは避けたいですね。

IS:もし、初回体験の問い合わせや会員さんの予約方法の改善ができれば、今後の御社の店舗運営にメリットはありそうですか?(解決質問)
顧客:はい、あると思います。

このように、発見した問題から想定できる他の問題を引き出し、顧客が抱える問題>商談に必要なコスト(時間)の状態を作った上で、端的に自社サービスでどのように問題を解決できるかを伝えた上で商談の日程調整を行います。

以上、私が考えるインサイドセールスのSPIN営業術活用方法をhacomono社の事例を踏まえて解説してみました。

活用方法について納得いただいた人もそうでない人も、きっと「じゃあ、どうやってSPIN営業術をうちの会社で使ったらいいん!」と思っていることでしょう。

最後に本書に記載されている示唆質問の準備方法とhacomono社での取り組みを紹介します。

すぐに使える示唆質問の準備方法

本書では「示唆質問を多くの人が使いこなせないのは、事前に準備をしていないからだ」と記載されているように、示唆質問を活用し商談数を増やすためには徹底した準備が必要だと私は思います。

示唆質問の準備として下記の3ステップが紹介されています。

  1. 見込客が抱えていると思われている問題点を書き出す
  2. その問題に関連した他の問題がないか考える
  3. 関連した問題に対してどんな質問が可能か考える

たったの3ステップで示唆質問の準備ができちゃいます。

示唆質問が上手にできないのは準備不足・練習不足のどちらかでしかないでしょう。

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hacomono インサイドセールスチームで作成中の【業態・競合別】状況・問題・課題シート

hacomono社では少し本書の内容とは異なりますが、上の画像のようなフレームワークを用いて、顧客の状況から想定できる問題・今後起こりうる潜在課題・事例・hacomonoで提供できる解決策をまとめ、誰でも高い品質でトークができるようにチームでシートを作成しています。

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作成中の内容がこちら

以上、大型商談を成約に導く「SPIN」営業術の解説とインサイドセールスでの活用方法についてまとめてみました。

SPIN営業術は営業でもインサイドセールスでも必見の内容だと思いますし、私自身、新卒時代にこの本を読んで営業成績が一気に上がった経験もありますので、まだ読んだことがないのであれば、今すぐにでも読むべき!とおすすめできる1冊です。

今後も別書籍のインサイドセールスでの活用方法や日々のインサイドセールスでの現場で学んだことを発信していきますので、Twitterのフォローもお願いいたします!

また、IS談義も絶賛受付中ですので「樋口と話してみたい!I相談したい」という方は気軽にDMいただけますと幸いです。

(提供:著者「樋口堅太郎」のnote

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