以前、Sales Engagement Platformサービス「Outreach(アウトリーチ)」について、2つの記事を公開しました。
1つ目の「インサイドセールスの生産性を200%高めたSales Engagement Platform『Outreach』の全容を徹底公開」では、Outreachができることやその価値、活用ポイント、Outreach導入後の成果についてまとめました。
2つ目の「『Outreach』シーケンスによりインサイドセールスがよりクリエイティブなチームへ昇華。半分の時間で2倍のアウトプットを実現できたワケ」では、Outreachの機能の1つである「シーケンス」とインサイドセールス観点の提供価値についてご紹介しています。
大変ありがたいことに、どちらの記事もたくさんの方の目に留まり、多くの反響を頂くことができました。また、最近は読者の方から、Twitter経由でOutreachのより具体的な機能やユースケースに関してご質問いただく機会が増えてきましたので、今回はそちらをお伝えしていきます。
「Outreachってなに?」と思った方は、先程紹介した2つの記事を読むと更に理解が深まりますので、是非そちらも参考にしてください。
Outreachシーケンスの流れと設定内容
Outreachには「シーケンス」と呼ばれる機能があります。シーケンスとは、見込み顧客とのエンゲージメントを深めるために、メールやコールといったリードに対するフォロータスクを自動化することができる機能です。
例えば、リマインドメールの自動送信や開封・クリックなど、顧客状況に合わせてコールのタスクの自動登録やタスク優先度の可視化などを行ってくれます。この機能を通じて、適切な営業活動を実施することができ、営業パイプラインを構築して受注に繋げやすい業務オペレーションを構築することができます。
具体例として、私がよく使っているシーケンスの流れとコンテンツの設定内容を紹介します。
Day1 ファーストアプローチ
初回のフォローメール(STEP1)を送信してから1分後、フォロー電話のタスクを設定しています(STEP2)。
その後、Outreach管理画面上で顧客の姓・名からLinkedInアカウントを検索して表示してくれます。Outreachに登録されている人物と同一アカウントであれば、コネクト申請のメッセージを送るというタスクが自動設定されます(STEP3)。LinkedInにログインせずとも、アカウント検索からコネクト申請までをOutreach管理画面上で完結できます。
Day2 リマインドメールの送信
「以前送ったメールは届いておりますか?」「この領域でお役に立てると思うのでご関心があればお時間ください」といった内容です。
Day3 具体的なディスカッショントピックの提案
「情報交換をさせてください」だけでは、受け手は時間を取るかどうか判断しづらいです。そのため「当日の時間がどれだけ有益になるか」を具体的にイメージして頂くために、成功した取り組みや同業界の他社事例など3〜4つ程のテーマを紹介するコンテンツを配信します。
Day4〜9 お役立ちコンテンツの案内
顧客からリアクションがない場合、長期的な接点を持つために「お役立ちコンテンツ」を案内するケースは多いかと思います。「お役立ちコンテンツ」とは、対象業界・業界向けのebookやイベントレポートのほか、直近のセミナー案内などです。
Day30 再度のアポイント取得メール
資料ダウンロード、もしくはイベント登録した当初は営業から話を聞く程の検討度合いではないが、1ヶ月時間が経過すると状況が変わることはよくあります。そのため、お役立ちコンテンツの案内が終わった3週間後に再度、最新資料の案内とアポイントを打診するメールを送ります。
Outreach 攻めのユースケース
続いて、インサイドセールス業務におけるユースケースをご紹介します。まずは、アプローチ活動の効率化やパーソナライズによる反応率の向上など、Outreachを活用した「攻めのユースケース」をご紹介します。
- ユースケース①|オンラインイベントで獲得したリードの一括インポート
- ユースケース②|顧客を起点にしたメッセージの最適化
- ユースケース③|反応がないリードへ直近のウェビナーや最新資料の案内
- ユースケース④|LinkedIn連携したマルチチャンネルでのアプローチ
ユースケース①|オンラインイベントで獲得したリードの一括インポート
BtoBのマーケティングや営業を行なっていると、展示会の出展やオンラインイベントに協賛することで大量にリードを獲得するタイミングがあります。
獲得したリードはSalesforceに登録され、インサイドセールスがSalesforce上で獲得したリード一覧を確認しながらリードフォローする流れが一般的です。この工程でOutreachを活用すると、「業務の効率化」と「顧客の反応率向上」の両方の改善効果が期待できます。
設定方法はシンプルで、該当リストのCSVをOutreachにインポートし、シーケンスを設定するだけです。インポートされた対象者にフォローメールを一括送信します。例えば、シーケンスを設定することで、単発でメールを送信して終わりではなく、送信後20日間のタスクや優先順位などのフォローステップをあらかじめ登録することができます。
ユースケース②|顧客を起点にしたメッセージの最適化
オンラインイベントなどの登録母数が多い場合は、顧客の業界や部署、役職に応じて送信するコンテンツを出し分けたいと考える方も多いかと思います。Outreachでは、リード属性によってシーケンスを分けて設定することで、顧客を起点としたメッセージの最適化を行い、反応率の高いアプローチの型をつくることができます。
更に、Outreach独自の項目を設定することができ、「氏名」「部署」「役職」といったCRM内に格納されている情報だけでなく、「商品・サービス名」「ブランド名」「利用ツール名」「同業界の主要企業名」といった情報を用いたパーソナライズ設定も可能です。
*メッセージのパーソナライズイメージについては以下の動画を参考にしてください。
参考動画)How to make Outreach sequences
顧客の「部署」や「サービス名」といった情報をOutreachに持たせた上で、シーケンスとメッセージテンプレートの紐付けを行うことができます。
例えば、単なる「情報交換のお願い」といった件名ではなく、「〇〇サービスに関する情報交換のお願い」といった、より顧客にパーソナライズした件名・メッセージ内容の設定が可能となります。
誰にでも当てはまるような無機質な件名よりも、反応率の高い、“埋もれない”工夫を意識しています。
*以下、特定の小売系企業に向けて送信した件名のサンプルです。
サンプル文面
“個客とつながる”CRM戦略の実現に向けた「{{custom12}}」顧客データ活用とオムニチャネル戦略に関する意見交換のお願い
*「{{custom12}}」は顧客の担当するブランド・サービス名が可変的に挿入されます。
その他、メールの返信率を上げるためのサンプル文面についてはこちらをご参考にしてください。
また、パーソナライズすることによって、こちらが提案したいと考えているトピックが顧客の業務内容や役割、ニーズに合致しているかを確認する意味合いもあります。例えば、部署名を文章に入れ込み、役割を確認することでアポイント取得時の顧客の期待値とサービス提供価値のアンマッチを防ぐことができます。
サンプル文面
「{{last_name}}様は{{title}}部所属と伺っておりますが、データ活用やオムニチャネル戦略を推進されるお役割でお間違いないでしょうか。本テーマとお役割が異なるようでしたら、大変お手数ですが適切なご担当者様をご推挙いただけますと幸いです。」
また、フォローした顧客のリアクションを全てOutreach上で確認することができるのも魅力のひとつです。
例えば、メールを開封したら目のマーク、シーケンスが走れば飛行機マークが付きます。その他にも、クリックや返信といった反応がほぼリアルタイムで表示されるため、リアルタイムで顧客の反応状況が分かる「Live Activity(ライブ アクティビティ)」という機能があります。顧客の反応や状況に合わせてアプローチの優先度を決めることができます。
ユースケース③|反応がないリードへ直近のウェビナーや最新資料を案内
リードに対して初回のフォローを行い、反応がなかった場合通常はリマインドを行います。しかしリマインドばかりしても顧客に嫌われる可能性があるため、顧客から一定回数リアクションがなかった場合、「お役立ちコンテンツ」を案内するアクションをシーケンスのプロセス上に組み込んでいます。
例えば、「3通の面談依頼メールを送っても返信がない場合、1週間後に直近のセミナーを案内する」というようなシーケンスです。これまで「営業担当とアポイントを取る程の温度感ではないが、セミナーがあれば情報収集のために参加したい」といったケースは少なからずあったため、そのような顧客には有効になります。
「シーケンス内の直近のセミナー情報を逐一入れ替えていくのは面倒」と思われた方がいるかもしれませんが、シーケンスとテンプレートと紐付けておくだけで、少ない工数で一括反映させることができます。
1つのマスタとなるテンプレートを更新することで、そのテンプレートと紐付いている(Linkしている)シーケンスが全て更新される仕様です。
例えば、EC、小売、飲食業界向けのシーケンスに「直近のセミナー案内」というテンプレートが紐付いていた場合、「直近のセミナー案内」のテンプレートの内容を変更するだけで、全てのシーケンスが更新されます。シーケンスを一つひとつ変えなくても良いため、とても便利です。
Linking the template will link the local template to the master template. Any changes made to the template locally within a sequence will change the master template throughout Outreach. It also keeps the statistics on opens/clicks/replies consistent throughout the platform.
出典)Outreach Supportページ
(和訳)テンプレートのリンク設定により、ローカルテンプレートがマスタテンプレートにリンクされます。シーケンス内でローカルテンプレートを変更した際は、Outreach全体のマスターテンプレートに反映されます。また、開封/クリック/リプライの統計情報をプラットフォーム全体で一貫して維持することができます。
ユースケース④|LinkedIn連携したマルチチャンネルでのアプローチ
Outreachは、ビジネス特化型SNSのLinkedInと連携できます。LinkedInでコネクト申請を行う際、通常であれば「LinkedInにログイン→繋がりたい人物のアカウントを探す→コネクトボタンを押してメッセージを送る」という手順を踏まなければなりません。
しかし、Outreachに対象者の氏名が入っていれば、LinkedInを自動検索してレコメンドしてくれます。Outreachがレコメンドしてくれた人物が対象者と同一であれば、LinkedInにログインせずとも、先ほどの手順を全てOutreachの管理画面上で完結させることができるのです。メールや電話に対して反応がない人はLinkedInでメッセージを送ったら返信を貰えるケースも少なからずあります。
また、アウトバウンドでお手紙を送ったリストをOutreachにインポートすることで、その後のフォロー架電の抜け漏れを防ぎ、かつ、手紙を送付した方のLinkedInアカウントの検索、メッセージ送信などの業務がOutreach上で完結できるため、フォロー精度が確実に向上します。
Outreach 守りのユースケース
次に、送信時間やシーケンスの停止と再開の制御、複数シーケンスの同時発火防止など、ユーザーにとってマイナスな印象を与えないようにするOutreach「守りのユースケース」をご紹介します。
- ユースケース⑤|返信か接続したタイミングでシーケンスが止める
- ユースケース⑥|送る時間帯を制御できる
- ユースケース⑦|複数のシーケンスにまたがる登録の可否や登録上限を制御できる
ユースケース⑤|返信か接続したタイミングでシーケンスが止める
「Outreach」では、シーケンスを止める/止めないという設定も柔軟にできます。
例えば、「コールが繋がった」「ミーティングを設定した」「顧客から返信があった」といった3つをトリガーにシーケンスを停止する設定をしています。この設定で「既に電話でお断りされたり、返信があった顧客に対して新たなメッセージが送られクレームになる」というトラブルを防げます。
顧客とコールは繋がったもののシーケンスは止めたくないという場合にも対応が可能です。例えば、「顧客の携帯電話にコールが繋がったものの、会議中ですぐに終話してしまう」ようなケースです。
この場合、接続して会話ができているものの、有効な接続とは言えません。そのため、リストのステータスは「コネクト」にするものの、シーケンスはそのまま走らせておきたいという状態です。とても細かい話ですが、Outreachではこのようなケースにも対応できるため、非常に柔軟性が高いツールだと言えます。
ユースケース⑥|送る時間帯を制御できる
顧客にアプローチする際、会社が休みである土日祝日や深夜帯など、アプローチが望ましくないタイミングにも制御対応できます。
シーケンスでメール送信を自動化することで、「顧客にとって良くないタイミングで勝手にメールが送られるのではないか」と不安に思った方もいるかもしれませんが、Outreachでは、メールの送信(送信しない)時間帯・曜日を分単位で設定することができます。
ユースケース⑦|複数のシーケンスにまたがる登録の可否や登録上限を制御できる
同時期に、複数のEXPOやセミナーに登録されるリードも少なからずあると思います。一つひとつのマーケティングイベントでシーケンスを設定していると、複数イベントに登録がある顧客に対しては、高頻度に似たようなメッセージが送信される懸念が当然出てきます。
そのような懸念を解消するため、シーケンスでは以下のような制御が可能になります。
・1日に登録できるシーケンスの上限数
出典)Outreach Sequence Rulesets Overview
・同じシーケンスに1回のみ登録か、繰り返し登録できるか
・複数のシーケンスにまたがる登録の可否
例)1つでもアクティブなステータスのシーケンスがあると他シーケンスに登録できない etc
例えば、「アポイントを目的とした追客のシーケンスがアクティブな状態であったとしても、直近のセミナー案内するシーケンスは設定したい」といった状況にも合わせて調整することができます。
Outreachに関するよくある質問
本記事のまとめ(課金体系と金額あり)
Outreachは、インサイドセールスの重要KPIである「活動量×質」の両軸からパフォーマンスを向上させ、労働集約的な働き方から脱却させる営業組織のインフラになり得るソリューションだと考えています。
MAツールが育成やスコアリングに有効なサービスだとすると、Outreachは「ラストワンマイル」でアポイントやウェビナーなど、人が介在する接点を獲得するシーンで有効なツールです。
私の体感だとOutreachを導入することで、すべてのインサイドセールス組織の生産性は1.5倍〜2倍ほど向上します。Outreachの年額費用はライセンス1つあたり1,680 USD(約22万円)、月額費用は約140 USD(約1.8万円)なので、考え方としてはインサイドセールスの給与を1.8万円プラスするだけで、生産性が大幅に改善するのであれば、見込める効果がかなり大きいコスパの高い投資になります。
Outreach Pricing:
・$1680 per license *ライセンス課金
・$1000 onboarding
*2022年8月時点の金額です。
副次的な効果になりますが、インサイドセールスのキャリアアップにも繋がります。どうしても「標準化された業務を実行する時間割合」が多い傾向にある職種ですが、Outreachにより誰が実行しても結果が変わらない業務は自動化され、空いた工数で顧客理解やジャーニー設計、それに基づくコンテンツやシーケンスへの落とし込みなど、クリエイティブな領域に時間を割くことができるようになります。
インサイドセールスを標準化された”作業”から解放し、顧客に向き合う時間に集中することで顧客価値を最大化することに繋がり、インサイドセールスを起点とした戦略設計やPDCAの加速など、組織全体のポテンシャルを引き上げることが期待できます。
以下に関連記事を掲載します。今回は具体的なユースケースの紹介でしたが網羅的にOutreachについて知りたい方はご参考になるかと思います。
Oureach(アウトリーチ)入門ガイド
Outreach入門ガイドを作成しました。記事には書いていない内容を含めて、体系的にOutreachの機能やユースケースの詳細を整理してます。ご関心ある方は以下より資料をダウンロードください。
皆さんからいただいた本記事の感想
(提供:著者「山梨 寛弥」のnote)